第296章

黒川綾がその件を水原拓真に隠し続け、頑なに口を閉ざしていたのも、まさにそれが理由だった。

翌朝、目を覚ますと、すでに日は高く昇っていた。

「あっ!」

短い悲鳴を上げ、黒川綾は慌ててベッドから飛び起きる。身支度を整えて会社へ向かおうとしたその手首を、水原拓真がぐいと掴んで引き止めた。

「やっと戻ってきたんだ。今は体を休めろ。会社に行くのは、体調が完全に回復してからだ」

「……」

「白井雪叶たちには俺から話を通しておいた。お前が無事に戻ったことは伝わってるし、これ以上何か言ってくることもない」

その言葉を聞いて、黒川綾はようやく安堵の息を漏らした。

突然の失踪が白井雪叶たちにどれ...

ログインして続きを読む