第306章

黒川綾は手にした契約書をじっと見つめていたが、結局はそれを鞄にしまい込んだ。まずは様子を見るしかないだろう。

帰宅したら、すぐに水原拓真に相談しよう。彼ならこの件について、どう考えるだろうか。

拓真は経験豊富だ。こういった突然の株式譲渡についても、自分よりずっと詳しいはずだ。

もし拓真が、この話を進めても問題ないと言うのなら、その時は自分も覚悟を決めよう。そうすれば、大きな間違いは起きないはずだ。

綾は不安な気持ちを抱えたまま定時を待ち、仕事が終わるとすぐに拓真のもとへ向かった。

拓真は綾の姿を認めると、その瞳に驚きと喜びの色を浮かべた。

「どうして来たんだ? 何かあるなら連絡し...

ログインして続きを読む