第310章

「ちょうどよかった。今日は君に、あるサプライズを用意しているんだ」

黒川綾は訳が分からず水原拓真を見つめたが、彼はただ手を差し伸べ、彼女の手を引いて外へと連れ出した。

車を降りて初めて、黒川綾は彼が連れてきた場所が、かつて二人が暮らした家であることに気づいた。

父が亡くなって以来、黒川綾は一度もここに戻っていなかった。

ここにはあまりにも多くの辛い記憶が刻まれており、どうしても忘れることができなかったからだ。

門の前に立ち尽くす彼女には、中へと足を踏み入れる勇気が湧いてこない。

水原拓真は黒川綾の手を握りしめた。その瞳には、以前にも増して深い悔恨の色が浮かんでいる。

「実は、こ...

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