第348章

水原雪乃は入院中でありながら、会社経営に対する手綱を少しも緩めてはいなかった。

社内のあらゆる業務は、あの秘書を通して逐一彼女の耳に入れられている。

黒川綾が盗作騒動の対応に奔走していると報告を受けても、水原雪乃の顔に笑みは浮かばなかった。

黒川綾の実力では、これほど厄介な事態を収束させることなど到底不可能だと、水原雪乃はよく分かっていたからだ。

水原拓真が手を貸さない限り。彼の手腕をもってすれば、鈴木芽依を見つけ出すことなど造作もないはずだ。

鈴木芽依という人物について、水原雪乃の記憶にはまったくと言っていいほど残っていない。

だが、秘書が「子会社の社員だ」と報告した以上、その...

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