第355章

夜のとばりが下りる。

食卓にて。

黒川綾は優しくスペアリブを取り分け、輝星の茶碗に入れた。

「今日は楽しかった?」

「うん、すっごく楽しかったよ、ママ。あのね、もうすぐ幼稚園でファミリーデーの行事があるんだけど、パパとママも一緒に来てくれる?」

輝星の長いまつ毛が瞬く。その葡萄のように丸く澄んだ瞳は、期待に満ち溢れていた。

黒川綾は赤い唇を微かに開いたが、何と答えるべきか迷ってしまった。

ちょうどその時、足音が聞こえてきた。

オーダーメイドのスーツに身を包んだ水原拓真が、長い脚を交差させて歩み寄ってくる。彼は口元に笑みを浮かべ、小さな輝星の頭を撫でながら、無造作にネクタイを緩...

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