第430章

白井雪葉は、くるりと背を向けて走り去った。

まるで後ろから猛犬にでも追われているかのような、慌ただしい後ろ姿だった。

黒川綾が苦笑していると、突然腰に鋭い痛みが走った。男特有のホルモンの香りが彼女を包み込み、次の瞬間、薄い唇が重なってきた。

熱を帯びた空気を交えた、激しい口づけ。

綾はキスに翻弄されて頭がくらくらとし、我に返った時には、怒りを宿したような双眸と視線がぶつかった。

無意識に相手を突き飛ばそうとしたが、いかんせん力が足りない。

「早く起きなさい」

氷のように冷たい声が唐突に響いた。

続いて、せわしない足音が近づいてくる。

絨毯が敷かれているにもかかわらず足音が聞...

ログインして続きを読む