第439章

そっと手を伸ばし、こわばった水原拓真の頬を撫でる。

「ご安心ください、ずっとおそばにいますから」

どうせ、逃げ出すことなどできはしないのだ。

真の自由を手にするまで、本音など決して口にできない。

水原拓真はそれが嘘だと分かっていても、頑なに信じようとした。

「分かっていたとも。お前が一番俺を愛していると」

隙間のない口づけが、雨あられと降り注ぐ。

黒川綾は目を閉じ、ずっと顔を腕で覆いながら、音もなく伝い落ちる涙をじっと堪えていた。

水原拓真の唇が細い首筋に落ちたとき、ふと塩辛い味が口内に広がる。

彼女が、泣いている。

自分はこれほどまでに、彼女を苦しめているというのか。

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