第493章

向かう道中、黒川綾は相手の素性についてしきりに尋ねたが、白井雪叶は全く要領を得ない様子だった。

「先方が会いたいって言ってきたのよ。しかも昨日の夜急にね。詳しい事情なんて私にもさっぱり」

随分ともったいぶっている。

何かがおかしい。

黒川綾の胸の内に、じわじわと不安が広がり始めた。

しかしその不安は、個室で待ち受けていた人物の顔を見た瞬間、綺麗に吹き飛んだ。

謎の人物の正体は、なんと林田の奥さんだったのだ。

彼女が接触してきた目的は、林田承一と同じく、水原拓真と林田安織の提携を解消させることにあるのは火を見るより明らかだ。

「デザイナーさんと二人きりでお話ししたいのだけれど、...

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