第527章

部屋の中。

不意に静寂が舞い降りた。

水原拓真は掠れた声で口を開いた。

「夜食でも食いに行こう。久しく二人きりの時間を過ごしてないからな」

黒川綾はすぐには答えず、ただ淡い視線を向けた。

水原拓真がその水入らずの時間を心待ちにしているのは、火を見るより明らかだった。

彼女は少し思案してから頷く。

「学生時代によく行った、あの夜市に行きましょうか」

車を走らせると、ほどなくして喧騒に包まれた街並みへと辿り着いた。

ここは大学周辺のエリアだ。

見渡す限り、ペアになった若い男女で溢れ返っている。

誰もが若さに輝き、活力に満ち溢れていた。

いつだったか、自分たちも彼らと同じよ...

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