第531章

 室内は静寂に包まれていた。

 林田安織は自分のお腹を撫でながら、毅然とした眼差しで言い放った。

「何があっても、あのクズに水原拓真の子供を産ませるわけにはいかないわ」

「まあいいじゃない。産んだところでどうだって言うの? 男か女かも分からないのに、どうしてそうムキになるの」

「それでも駄目よ。私の脅威になるものは、一切許さない」

 林田安織の瞳には、異様なまでの執念が宿っていた。

 彼女に言わせれば、あいつら母子三人に這い上がる隙など微塵も与えてはならないのだ。

 林田の奥さんたち母子三人は、一生自分の足元で泥水を啜っていればいい。

 一方、その頃。

 外を取り囲む大勢の...

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