第550章

ドガンッ。

林田月香はビクッと肩を揺らした。我に返ったときにはすでに車は急停車しており、窓の向こうから陰鬱な顔をした男が近づいてくるのが見えた。

バンッとドアが開き、ボディガードたちが先を争うように車から飛び出して、周囲を幾重にも取り囲んだ。

水原拓真は冷たく鼻で笑った。たいまつのように鋭く、氷のように冷徹な眼差しで彼らを一瞥すると、一歩、また一歩と距離を詰めていく。

足音が近づく。

彼の視線の先には、ガタガタと震えながら座席の隅に縮こまる林田月香の姿があった。そこに、かつての傍若無人な振る舞いは微塵もない。まるで傷ついた小鹿——いや、手負いの獣のようだった。

車にたどり着いた彼...

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