第554章

バスルーム。

ザーザーと冷たい水音が響く。

黒川綾は冷水が体を滑り落ちるのに任せ、腕で自身を抱きしめながらガタガタと震えていた。声もなく涙がこぼれ落ちる。

先ほどの暴力的な光景が、脳裏に焼き付いたかのように絶えず徘徊している。

まるで、あの暗黒の日々に引き戻されたかのようだった。

思い出したくもない記憶など、とっくの昔に綺麗さっぱり忘れたつもりでいた。だが、骨の髄まで刻み込まれているかのように、忘れられない。どうしても忘れられなかった。

目を閉じれば、凌辱された場面がフラッシュバックする。

自分はまだ人間なのだろうか?

水原拓真の目に、自分は人間として映っているのだろうか?

...

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