第560章

もちろん、欲しいに決まっている。

あれは父の遺品なのだから。

黒川綾は少し考え込んでから口を開いた。

「わかったわ。それで、まだ他に用でも?」

「ほんの少しだけお願いがあって。妹が誕生日を迎えるから、何か贈り物をしたいの。デザインをお願いできないかな?もちろん、タダとは言わないわ。きちんとお金は払うから」

「有名なデザイナーである私のデザイン料が、どれほど高いか知っているでしょう?」

視線が交わり、二人は示し合わせたように吹き出した。

「お酒に付き合ってくれない?バーにでも行きましょうよ」

吉野文詠の寂しげな眼差しを向けられ、黒川綾はどうしても断ることができなかった。

しか...

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