第572章

エレベーターを降り、車に乗り込んでも、林田月香は悔しげに下唇を強く噛みしめたまま押し黙っていた。

林田夫人も容赦はしなかった。

「随分と偉くなったものね。自分の考えで動けるようになったつもり?図星でしょうけど、黒川綾のところに乗り込んで、身の程をわきまえて身を引けとでも言うつもりだったんでしょう。水原拓真と結婚するためにね」

視線が鋭く交錯する。

娘のばつが悪そうな顔を見て、図星だと確信した。

林田夫人は、もう一発平手打ちを食らわせたい衝動に駆られた。

「どこまで馬鹿なの?自分の立場も弁えずに」

「いいこと、水原拓真と黒川綾の絆はそう簡単に切れるものじゃないわ。あなたの浅知恵な...

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