CH212

「聞いたか……」

視線がモルガンに向けられた。彼女は長いテーブルのそばに立ち、突き刺さるような視線の重圧にもかかわらず、冷静で落ち着き払っていた。深紅のローブは蝋燭の光の中でほのかに揺らめき、彼女はそれをまるで鎧のように纏って、周囲の注目など意に介していない様子だった。俺は微笑み、彼女のそばへ歩み寄ると、その体を腕の中に引き寄せた。

彼女は俺を見上げて微笑んだ。「遅かったのね……たぶん」

「防備の強化に予想以上に手間取ってな」俺は彼女の肩に顎を乗せ、低い声で尋ねた。「何があった?」

モルガンは片眉を上げた。口調は軽やかだが、そこには少しばかりの苛立ちが滲んでいた。「どうやら、あの...

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