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レン

その時、リュウが座っていた席の隅に、何かが置かれているのに気づいた。

ピン札の束だ。

多すぎる。普通のチップの額ではない。

どうすべきかわからず瞬きをしていると、その現金に向かって手が伸びてきた。

「それ、私のよ」

さっき私に足をかけたウェイターの一人が、鋭い声で言った。「リュウとその兄弟はいつも私の担当エリアに座るんだから」

彼女の手が届く前に私は現金をひったくり、彼女を睨みつけた。

「今夜、彼らを接客したのは私です」私は平然と言い返した。

彼女は腕を組み、鼻で笑った。「そういう問題じゃないのよ。あんたは新入りでしょ。調子に乗らないで。厄介なことになる前に、それをこっちに渡しな...

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