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ツネオ視点

彼に勝ちを譲るだと?

同じ竜族の相手に? 桶の向こう側でぴょんぴょんと飛び跳ねる彼を見て、俺は自分自身を鼻で笑いそうになった。だが、彼女と視線が合うと、俺は小さく頷いてみせた。彼は竜とはいえ、まだほんの子供なのだ。

モーガンの父親は、かつて彼女に勝ちを譲ったことがあったのだろうか。それとも、たまには子供に花を持たせるというのが、人間界の習わしなのだろうか。

俺は桶の前に向かい合い、膝をついた。柔らかい土に膝が沈み込む。水は予想以上に冷たく、地面の温度をさらに下げているようだった。おそらくローブは泥だらけで台無しだろう。カイは俺の隣にある小さな桶のそばに跪き、興奮でその小さな体...

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