第4章
美月視点
翌日の午後、黒沢は学会に出席するため出かけていき、広大な屋敷には私一人だけが残された。千載一遇の好機。私は彼の書斎に忍び込み、息を殺して証拠の捜索を開始した。これは、時間との戦いだ。黒沢の会議は通常三時間ほどだが、彼は気まぐれに、何の連絡もなく早く帰宅することがある。
里奈の話では、金庫はこの書斎のどこかにあるはず。問題は、どうやってそれを見つけ出すか。
私は書斎を区画に分け、系統立てて捜索を開始した。まずは壁にかけられた重厚な絵画を一枚ずつ裏返す。空振りだ。次に、寄せ木張りの床。一枚一枚、指の関節で慎重に叩き、空洞の音がしないか耳を澄ませる。だが、鈍い音しか返ってこ...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章


縮小

拡大