第7章

美月視点

「本当に、このリスクを冒す価値があるのか」

海斗は神経質に腕時計を確認しながら、かろうじて聞き取れるほどの声で囁いた。

私たちは心理学部棟の裏口に立っていた。夜の闇が、完全にキャンパスを包み込んでいる。あたりは不気味なほど静まり返り、時折聞こえる警備員の遠い足音だけが、その静寂を破っていた。心臓はドラムのように激しく脈打ち、手のひらは汗でじっとりと湿っている。無謀な計画だ。だが、必要な賭けだった。

「怖いなら、今すぐ帰りなさい」

私は静かに言った。

「でも、私は里奈の死の真相を知らなければならない。私には、その責任と、義務がある」

——未咲、里奈、あなたたちの...

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