第267章 氷の花

 自分の時空に戻ってきた渡辺千咲は、一晩中眠れずにいた。

 向こうの世界にもう少し留まりたい気持ちはあったが、離れなければ、自分が抑えきれなくなってしまう気がしたのだ。

 これまでずっと男性には冷淡だったはずなのに。でなければ、これまでの年月、一度も恋をしなかったわけがない。

 いつから自分は、こんなに大胆になったのだろう。

 美貌は人を大胆にさせる。それは男女を問わない。

 ただ、好きな人にだけ感じてしまうのだ。

 空が白み始めた頃、渡辺千咲はようやく二時間ほど眠ることができた。

 いっそのこと、とそのまま起き上がることにした。

 二人の子供はもっと早起きだった。

「千咲...

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