第272章 彼らを騙した!

 今回、渡辺千咲は男を一人、中島暁のそばへと転送させた。

 幸い、中島暁という移動可能な定点座標があった。

 男は転送から戻ると、その手にはスマートフォンが握られていた。

「どうしてまた戻ってきたんだ? 帰りたくなかったのに」

「あっちに帰りたいよ、あそこは本当に最高だったんだ」

 渡辺千咲は心の中で、その男のあまりにも大袈裟な演技に感心した。

「向こうは本当に普通の、まともな世界なのか?」

「そうだ。写真は? 見せてくれ」岩崎北が低い声で尋ねる。

「撮る暇もなかったんだ。すぐに連れ戻されちまった」

「頼む、もう一度俺をあっちへ送ってくれ! こんな汚い世界、もういたくない!...

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