第28章 いくらかかるのか私が補う

鈴木由香には二人の子供がいる。長男の小林陸は今年二十八歳で、真藤町の役所に勤めている。給料はそれほど高くないが、福利厚生は良い。

娘の小林沙夜は二十歳で、芸能事務所と契約したが、まだ正式にデビューはしていない。

鈴木心優は新幹線の駅を行き交う人波、煌々とした照明、傍らで点滅する広告看板を眺め、一瞬戸惑いを覚えた。

「真藤町の新幹線の駅、人が多すぎて目が回っちゃう」

「私についてきて」

渡辺千咲は片手で一人ずつ手を取り、鈴木心優とお祖母ちゃんを連れて新幹線の駅を出た。

鈴木心優は、娘があまり多くの荷物を持たせなかったことに内心ほっとしていた。これだけの大荷物では、あまりにも不便すぎ...

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