第300章 記憶が足りないことを恐れる

高橋栞奈が治療ポッドから出てきた。彼女の記憶はまた一段と失われていた。

しかし今回は、記憶を失うことを恐れた彼女が、事前にビデオを録画しておいた。

渡辺陽は再び彼女にアップグレードを施し、その記憶に自動録画機能を追加した。

「渡辺陽」

「すまない、俺には君を完全に元通りにすることができない」

渡辺陽の眼差しに一瞬、罪悪感がよぎる。高橋栞奈の脳の損傷は深刻で、金属で脳の他の機能を補ってはいるものの、記憶を保存できるのは片方の脳だけだった。

まさに魚の記憶力と言ってもいい。

高橋栞奈は、もはや半人と言える存在だった。

実のところ、渡辺陽にはすでに新たな解決策の目途が立っていた。十...

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