第4章 金を売る!最初の金

渡辺千咲は空間に現れたアクセサリーケースを見つめる。中には、本当に黄金が入っていた!

金のネックレス! 金のブレスレット、それに金の指輪まで! これで五十グラムくらいはあるんじゃないだろうか。

今の金の価格はいくらだろう? 渡辺千咲は逸る気持ちを抑え、スマホで確認した。

金価格は一グラム一万一千円! 最近、金価格は右肩上がりだ!

このボロスマホはとっくに買い替えるべきだった。カクカクしてもうまともに使えない。大学に行かせてもらったけど、学費は決して安くはなかった。

両親は二人とも農業を営んでいて、使うお金は一銭たりとも両親が汗水流して稼いだ辛苦の結晶だ。

卒業後は毎日九時から二十一時まで、週六日勤務。給料は家賃と日々の生活費で消えてしまう。結局、そのプレッシャーに耐えきれず、彼女は実家に戻ってきた。

しゃがれた声で母に「家に帰りたい」と電話したことを、今でも覚えている。

内心は不安でいっぱいだったが、鈴木心優はとても嬉しそうにこう言ってくれた。「お帰り! ここはいつだってあなたの家よ!」

今、渡辺千咲は手の中の金製品を見つめている。これらを合わせれば、おそらく五十グラム以上はあるだろう!

渡辺千咲は服を着替えて階下へ降りた。この時間、両親はまだ外で仕事をしており、家にいるのは祖母だけだった。

お婆さんは背を丸め、渡辺千咲が原付に乗って颯爽と出かけていくのを見ていた。

お婆さんが道端に立っていると、ほどなくして数人のお婆さんたちがやってきた。

「あんたんちの孫娘、大都会にいたんじゃなかったのかい? どうしてまた帰ってきたんだ?」

「ちょうどあんたんちの孫娘に相手を紹介しようと思ってたんだよ! 町役場で働いてて、五険一金付き、見た目もシュッとしてて、町に家もあるんだ!」と、別の赤い花柄の服を着たお婆さんが言った。

この渡辺家には一人娘しかいないことは誰もが知っている。彼女を嫁にもらえば、将来は家を丸ごと手に入れられる。渡辺千咲の家には宅地もあれば、割り当てられた農地もあるのだ。

渡辺家には男手がいないため、いつも村では笑いものにされていた。

「せっかく大学まで行かせたってのに、大都会で半年も働かずに帰ってきやがって!」渡辺のおばあさんはそのことを思い出すだけで腹が立った。

「女の子が男の子みたいに大都会で頑張るなんて、きっとやっていけなくなったんだろうさ。さっさと結婚するのもいいんじゃないかい?」と、そばにいた老婆が相槌を打った。

渡辺のおばあさんはふと思った。もし渡辺千咲がさっさと結婚してしまったら、この家の宅地を婿方に持っていくわけにはいかない! 自分の甥たちに渡すならまだしも、他人なんかに安々と渡してたまるか!

「あの千咲が帰ってきたら、お見合いに行かせてみるって言ってやる」

「うちの村じゃ、その年頃の女の子はもう子供がお使いに行けるくらいだよ! あんたんちの孫娘にも急がせないと」

渡辺千咲が実家に戻りたがらなかった理由の一つは、村人たちのおしゃべり好きにもあった。しかし、両親の存在が、彼女が帰ってくる最大の支えだった!

村の多くの人が彼らを嘲笑したが、渡辺千咲の両親は小さい頃からずっと彼女を守ってくれた!

渡辺千咲は原付を飛ばし、村から町まで四十分近くかけて、町の大きな金買取店に直行した。

そして、アクセサリーケースごとすべて売却した。

「金の買い取りですと、価格は少し下がってしまいますね」と店員が言った。

「それにしても、このデザインは随分と目新しいですね。どうして売ってしまうんですか?」

これは別の時空から来たデザインだ。こちらではもちろん非常に珍しい。

ふと、ネットで売ればもっと高値がつくのではないかと思った。しかし、今はとにかくお金が必要だ。まずはお金に換えて、設備を整えなければ。

少なくとも、家にパソコンを一台買い、スマホも新しくしたい。

「今、ちょっと手元不如意でして! これは大都会で高く買ったものなんです」渡辺千咲は顔色一つ変えずに言った。

女性店主は、電卓を手に笑顔で計算を始めた。

「今の金価格は一万一千円、これは全国統一です。買い取り価格は一万円ですが、デザインが素敵なので、一グラム一万五百円で計算しますね」

渡辺千咲は、買い取り価格が少し安くなることは承知していた。

「はい!」渡辺千咲は頷いて同意した。ここで食料を少し買っておけば、空間の向こう側がまた金を探してくれるだろう。

女店主は電卓を彼女に見せながら言った。「合計で五十五グラム、一万五百円で計算して、全部で五十七万円になります。カードにしますか? それともアリペイ?」

「アリペイでお願いします!」

アリペイに入れておけば利息もつく。

渡辺千咲はスマホの中の数字を見てうっとりし、胸が高鳴った。

以前のアリペイにはせいぜい数万円しか入っていなかったが、今は一気に数十万円だ。

ささやかながらも一財産築き、興奮を隠せない!

しかし、渡辺千咲は最も重要なことを忘れてはいなかった。急いで別の時空の中島暁のために物資を調達しなければならない。スーパーでインスタントラーメン、自己加熱式の食品、圧縮ビスケット、ミネラルウォーターを買い、薬局で薬品もいくつか購入した。

人気のない場所を見つけ、買ったばかりの品物をすべて空間に収めた。

貯金はすでに三分の一が消えていた。

続いて彼女は町の大きなショッピングモールへ直行し、スマホを三台購入した。

自分と両親に一台ずつ。

両親はこれまでガラケーを使っており、しょっちゅう電波が悪くなっていた。これで二人とも新しいスマホに替えてあげられる。

さらに両親、母方の祖父母、そして自分のために服と靴をそれぞれ一式買い、日常の仕事や絵を描くためにノートパソコンも一台購入した。

パソコンは配送してくれる。でなければ、原付であんなにたくさんの物を持ち帰ることはできなかっただろう。

買い物を終えた頃にはもう一時になっていた。彼女は町で米線を食べ、フライドチキンも買った。

リンリンリン。

渡辺千咲のスマホが鳴った。番号を見ると、まさにお母さんからの電話だった。

「千咲、どこに行ってたの? まだご飯食べに帰ってこないから。お肉煮込んでおいたわよ」とお母さんが言った。

「町にいるの。もうすぐ帰るから!」

電話を切り、今日買ったものを見つめると、気分は最高だった。お金を使えるって、なんていい気分なんだろう!

彼女が午後に家に着いた頃には、もう三時か四時になっていた。

村の入り口では、お婆さんたちがこの時間になると集まってきて、あれこれと誰かの噂話に花を咲かせるのが常だった。

「あれ、渡辺さんちの娘じゃないか。なんであんなにたくさん物を買ってるんだい?」

「本当にお金の無駄遣いだね。あの子を嫁にもらったら、家計がもつのかしら?」

「大都会から帰ってきた子は、やっぱり違うねえ」

数人のお婆さんたちがおしゃべりをしていると、ほどなくして隣の高田家の娘が軽自動車で帰ってくるのが見えた。

また新たな噂話が始まる。

「あれ、高田さんちの娘じゃないか。もう軽自動車に乗ってるのかい?」

「あそこの娘さんは街に嫁いでね、小さな食堂を開いて、結構稼いでるらしいよ!」

渡辺千咲は原付で家に帰った。原付はもうバッテリーが切れそうだ。昼間に町で一度充電したのだが。

そのうちお金ができたら、自分も車を買おう。でも、まずは免許を取らないと! ついでに両親にも取らせよう!

渡辺千咲が大きな荷物をいくつも抱えて庭に入っていくと、鈴木心優が庭で鶏に餌をやっており、お父さんは木材を鋸で切っていた。

「千咲、どうして今頃帰ってきたの。部屋にご飯とってあるわよ!」鈴木心優は渡辺千咲が帰ってきたのを見て嬉しそうに言った。

そして、渡辺千咲がたくさんの荷物を抱えているのを見ると、慌てて駆け寄って手伝いながら言った。「あなた、一体どこへ行って、こんなにたくさん買ってきたの?」

前のチャプター
次のチャプター