第40章 血なまぐさい映画を急いで補う

渡辺千咲は中島暁に目を覆われ、何も見えなかった。彼の手はなんて大きいのだろう!

「ひとまずここを離れよう」と中島暁が言った。

早く快晴基地に戻らないと、日が暮れてしまう。夜は危険が伴う。

「もう目を覆わなくていいわ」渡辺千咲は眉をひそめて言った。

ここが終末世界であることは知っている。だからこそ、覚悟を決めてやって来たのだ。

中島暁は緊張した面持ちで手を引っ込めた。彼の長いまつ毛が、そのざらついた手のひらをくすぐった。視界を遮るものがなくなり、渡辺千咲は自分の頭が彼の肩の高さにしかないことに気づいた。

中島暁は背が高い! 自分は一六二センチもあるのに、それなら中島暁は少なくとも一...

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