第9章 両方とも価値があると思った

数人の顔はやつれ、体は痩せこけ、その視線は期せずして高橋良介が煮ている湯気の立つインスタントラーメンに注がれていた。湯気はゆらゆらと立ち上り、食欲をそそる香りを運んでくる。

彼らの眼差しには、渇望の熱と、言葉にできない切なさが入り混じっていた。

口元が無意識に微かにひきつる。まるで呼吸をするたびに、その香りを一筋たりとも逃すまいとしているかのようだ。

ごくりと唾を飲み込み、喉から微かな音を立てる者もいる。空気は凍りついたかのようで、この一瞬、時間の流れが異常に遅くなる。聞こえるのは、ただ麺が煮えたぎる音だけ。一人一人の眼差しが、強烈な渇望を訴えていた。

もし誰か一人が手を伸ばして奪い...

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