第95章 婿養子

渡辺千咲は映画で見たことがあった。最底辺の人間が、食料がなくなり人肉を食らう場面を。

「あの救助された男、片足と腕の半分を失っていた」

「彼に強化薬を服用したいか、聞いてみますか?」小川強が言った。

彼はもうあんな状態だ、これからの人生は廃人同然だろう。

強化薬を選んで実験台になるか、それとも一生このまま過ごすか。選択権は彼の手の中にある。

「聞いてみてくれ」中島暁は言った。

「はい」

「うちのトトちゃんも強化薬を飲んだけど、特に反応はないみたい。血液検査の結果はもう出た?どうだった?」渡辺千咲が尋ねた。

彼女が言い終わるか終わらないかのうちに、石田岩が部下を一人寄越し、トト...

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