第5章

明日香視点

記憶が津波のように押し寄せてきた。家族を皆殺しにされた後、私は敵の追跡から逃れるため、最も汚い歓楽街に身を隠さなければならなかった。生きるために、体を売るしかなかったのだ。十六歳から十九歳まで――地獄のような三年間。

毎晩の屈辱、流した涙。男たちの汗の臭い、がさつな手、そして……。

「それで、一体何が望みなの?」私は歯を食いしばり、手のひらに爪を食い込ませながら尋ねた。

「簡単なことよ」伊織は優雅に煙草の灰を弾いた。「物分かりのいい子になって、自分から出ていくことね。さもなければ……黒崎政司の新しいペットが、かつて娼婦だったなんて知ったら、この街の人たちがさぞか...

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