第106章

白樺智は、桐谷憂の手腕を嫌というほど理解していた。桐谷憂がこの会社を買収した際、彼には反抗する隙すら与えられなかったのだから。

彼は最後に、意を決してこう告げた。

「わかりました。では、この株はお譲りします」

一〇パーセントの株式といえば、少なくとも数千万円の価値はある。それをみすみす空見灯にくれてやるつもりは毛頭なかった。

それに、空見灯の機嫌を損ね、さらには桐谷憂まで敵に回してしまえば、この会社に居場所などないことくらい彼にもわかっていた。

平社員や中間管理職が何年働こうと、数千万円を稼ぐのは容易ではない。ならば、今すぐ身を引いたほうが賢明だ。

長年会社を経営してきた白樺智は...

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