第114章

「会社を譲られた上に、手元には六〇……んぐっ!」

唐沢雪優が言い終わらないうちに、空見灯はすかさずエッグタルトを彼女の口に押し込んだ。

「ここのエッグタルト、絶品だから食べてみて」

空見灯は必死に目配せを送る。唐沢雪優は何度か頷き、ようやく彼女の意図を察したようだ。

エッグタルトを飲み込むのを待って、彼女は声を潜めて尋ねた。

「マジな話、本当に入金されたの? 小切手が偽物ってオチじゃないでしょうね?」

「桐谷社長の弁護士が立ち会ってたのよ。何を心配してるの?」

その話題になると、空見灯の表情は晴れやかになった。続けざまにエッグタルトを四つも平らげ、顔には笑みが溢れている。

唐...

ログインして続きを読む