第127章

空見灯は心ここにあらずといった様子で、自然と歩調を速めていた。

その姿を認めた雾岛征十郎が、慌てた様子で彼女の前に立ちはだかる。

「空見さん、奥様が中に」

空見灯が「少し待ちます」と言おうとした矢先、社長室の重厚な扉が押し開けられ、怒気を孕んだ一之瀨楓花が姿を現した。

彼女は空見灯を一瞥すると、冷ややかなあざけりを浮かべる。

「見くびっていたわね。あの五十嵐悠真を籠絡するなんて、大した手腕だわ」

捨て台詞を残し、一之瀨楓花は振り返りもせずに去っていった。

呆気にとられ、その場に立ち尽くす空見灯。

「空見灯、入れ」

部屋の中から、桐谷憂の冷徹な声が響いた。空見灯は我に返り、オ...

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