第151章

空見灯はそれ以上、何も言わなかった。永瀬睦が桐谷グループに来ているということは、事態はそう単純ではないという予感がしたからだ。

桐谷憂が「罠を仕掛けた犯人を捕まえた」と言うのなら、自分の目で確かめてやろう。彼がまた自分の『高嶺の花』を守るために、適当な身代わりを仕立て上げたのかどうかを。

案内されたのは社長室ではなく、財務部のあるフロアだった。

財務部の入り口にはすでに多くの野次馬が集まっていたが、その人垣の中心に、長身の冷ややかな男――桐谷憂が立っていた。

彼は沈黙したまま佇んでおり、周囲の人間は示し合わせたように、彼から一メートル以上の距離を空けている。

桐谷憂という人間を知ら...

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