第九十四章

空見灯は何も言わず、ただじっと白樺智を見据えた。

神崎曉人をスカウトした件について、社内の人間の多くが信じられない思いでいることは、彼女自身もよく分かっていた。

どう見ても勝ち目のない状況で彼を獲得し、さらには五十嵐家の案件まで勝ち取ったのだから、面白くないと思う連中がいて当然だ。

その筆頭が、かつての経営者である白樺智だった。

彼女が黙り込んでいるのを見て、白樺智は肩をすくめた。

「空見灯、お前が今まで爪を隠していたのは認めるよ。だが、篠原流輝を敵に回して、この業界でやっていけると思っているのか?」

彼は空見灯の目の前まで歩み寄ると、諭すような口調で言った。

「神崎曉人の違約...

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