第3章

高橋奏が去って間もなく、私は見知らぬアカウントからメッセージをいくつか受け取った。

『笹原詩織、奏君はあなたのことなんて愛してない。彼を私に返して。彼が結婚するのを見るのは、切腹するより辛い』

そのメッセージを睨みつけ、指が微かに震える。

ここ数日、私は高橋奏の無情な裏切りを憎むばかりで、星野月のことは一度も責めなかった。彼女もまた哀れな人間なのだと思っていたから。だが、この瞬間、ようやく理解した。二人は同類の人間なのだと。

同じくらい胸が悪くなるほど、同じくらい自己中心的だ。

私たちの離婚手続きが終わるまでは、星野月は不名誉な不倫相手であり、他人の家庭を破壊した罪人だ。それなのに、よくもまあ私の夫をよこせなどと言えたものだ。

私は深呼吸を一つして、返信した。

『星野月、そんなに彼が好きなら、今までどこにいたの? 他人の結婚に割り込むのがそんなに好きなの?』

すぐにメッセージがポップアップする。

『私と奏君は七年間も愛し合ってきたの。不倫相手というなら、私は違うわ。それに……愛されない方が余計者なのよ』

画面にまた新しいメッセージが飛び出す。

『もう奏君を縛りつけないで。信じられないかもしれないけど、私が電話一本かければ、彼はいつでも私のそばに現れるわ』

『笹原詩織、彼と離婚しなさい。私の前ではあなたに勝ち目なんてないって、心の中では分かってるでしょ』

その文字列をじっと見つめながら、私は奇妙な感覚に陥った。

どうして私が、この『賞品』を彼女と奪い合わなければならないのだろう?

離婚するだけじゃない。財産分与で会社の支配権を手に入れて、高橋奏に裏切りの代償を徹底的に思い知らせてやる。

私は躊躇なく星野月のアカウントをブロックし、それから鶴見凛子の電話番号をタップした。

「凛子、病院まで付き合ってくれない?」

私の声は驚くほど落ち着いていた。

「どうしたの?」

凛子の声は心配に満ちている。

「大丈夫?」

「ええ、大丈夫。ただ、付き合ってほしいの」

「すぐ行く」

凛子はそれ以上何も聞かなかった。これこそが、私が彼女を最も信頼する理由だ。

彼女は、いつでも私の味方でいてくれる。

約二十分後、凛子は私の家の玄関に立っていた。

彼女は私の姿を見るなり、目に驚きの色を浮かべた。自分が今どんな様子か、分かっている——目の下には濃い隈が浮かび、頬は明らかにこけている。

私は高橋奏と星野月のことを彼女に話し、先ほど星野月から送られてきたメッセージを見せた。

凛子は珍しく激しい怒りを見せた。

「あいつら、絶対バチが当たるわ!」

彼女は私の手を握りしめる。

「悪いのは決してあなたじゃない、詩織」

私はそっと膨らんだお腹を撫で、力なく笑った。

「中央病院で、午後の手術を予約したの」

ごめんね、赤ちゃん。本当にごめんね。ママは、こんな家庭にあなたを迎えるわけにはいかない……。

凛子の手が、そっと私のお腹に触れる。その目には痛ましさが満ちていた。

「でも、赤ちゃん……もう五ヶ月なんでしょ。今手術したら、体にすごく負担がかかるわ」

「こんな家庭に、この子を産み落とすわけにはいかない」

「一緒に行くわ」

凛子はきっぱりと言った。

「大丈夫よ、詩織。あなたには私がいるから」

私は頷いた。

中央病院の診察室で、医師の声がどこか遠くから聞こえてくるようだった。

「胎児はもう形になっていますよ、笹原さん。本当に中絶なさいますか?」

私は膨らんだ自分のお腹を見下ろし、小声で答えた。

「はい」

その声はほとんど聞き取れないほど小さく、まるでお腹の赤ちゃんに聞かれるのを恐れているかのようだった。

五ヶ月。もう外の音も聞こえる頃だろうか。ママが何をしようとしているか、分かってしまうだろうか。怖がったり、悲しんだりするだろうか。

医師は眼鏡を押し上げ、真剣な表情で言った。

「医療規定に基づき、一連の同意書にご署名いただく必要があります。この月数での手術には一定のリスクが伴いますので、プライバシー保護は厳重に行います」

彼は私に書類の束を差し出した。

「よくお読みになった上で、サインをお願いします」

私は機械的に一枚一枚に名前を書き込んでいく。自分の魂が天井まで浮かび上がって、この全てを冷ややかに傍観しているような感覚だった。

看護師に案内されて手術台に横になり、病衣に着替えさせられる。冷たい消毒液が肌に塗られ、麻酔医が注射の準備を始めた。

ごめんね、赤ちゃん。

麻酔針が、私の皮膚を突き刺した。

「詩織? 詩織、目が覚めた?」

目を開けると、凛子が私の手を握っていた。その顔には心配が張り付いている。

「手術、無事に終わったわ。赤ちゃんは、もう……」

凛子はそう囁き、親指で私の手の甲をそっと撫でた。

私は頷く。体が空っぽになったような感覚だった。

腹部が空虚なだけではない。心もだ。覚悟はしていたものの、体の痛みは起きたことの重大さを無視させてはくれなかった。五ヶ月も宿した子供が、取り出されたのだ。痛くないはずがない。

「高橋奏から、何度も電話があったわ」

凛子はためらいがちに言った。

「すごく必死にあなたを探してるみたい」

私は目を閉じ、深く息を吸う。

「私のスマホ、取ってくれる?」

凛子からスマホを受け取ると、私はメッセージアプリを開き、躊躇なく高橋奏のアカウントをブロックリストに入れた。それから電話番号、メールアドレス、全ての連絡先を。

「赤ちゃんは私一人のものじゃない。彼にも知る権利はあるわ」

私は静かに言った。

凛子は私の意図を察したように、頷いた。

「彼に、真実を知らせるのね?」

「ええ」

私はベッドサイドテーブルの上のカルテと手術の明細書に目をやる。

「凛子、お願いがあるの。これを箱に入れて、高橋奏に送って」

「本気なの?」

「ええ、本気よ」

私の声は驚くほど平坦だった。

「あいつらを祝福するつもりなんてない。高橋奏が、永遠に安らかな気持ちになれないようにしてやるの」

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