第11章

かつて、私は深夜まで畳に座り、彼が酒と香水の匂いを纏って玄関に足を踏み入れるのを待っていた。その後、私は寝室で独り眠ることを覚え、ドアの錠が回る音を期待することはなくなった。

しかし近頃、誠の行動は見慣れないものに感じられた。

彼は時間通りに帰宅し、時には私よりも早いことさえあった。キッチンにはいつも料理の香りが漂っている——味噌汁、焼き魚、漬物。まるで、私たちが結婚したばかりの頃の食卓のようだった。毎晩、彼の眼差しには久しく見ていなかった熱意が宿っていた。

「涼子、一緒にテレビでも見ないか?」

誠はリビングの中央に立ち、緑茶の入った湯呑みを二つ手にしていた。

テーブルの...

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