第12章

鼻を突く消毒液の匂いが空気に満ちていた。

目を開くと、ぼやけた白色が視界を埋め尽くす。

瞬きをすると、視界が次第にはっきりとし、白い天井の蛍光灯が眩しくて頭が痛んだ。身じろぎしようとすると、軽い疼きが走る。

「涼子さん、お目覚めですか?」

白衣をまとった看護師がベッドの傍らに歩み寄り、静かに問いかけた。

「ここは……病院?」

私の声は少し掠れていた。

「はい。交通事故に遭われました。ですがご心配なく、お怪我はそれほど重くはありません。軽い脳震とうと、いくつか擦り傷があるだけです」

看護師は私の点滴の速度を調整しながら、穏やかな口調で説明した。

記憶が潮のように...

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