第4章

人生の転機が、酔った末のアクシデントから始まるなんて、思いもしなかった。

その夜、私は銀座のバーに足を踏み入れた。

一人でこういう場所に来るのは初めてだった。普段は誠のクライアント接待に付き合う時くらいしか、ここに顔を出すことはない。

バーの店内は落ち着いたラグジュアリーな内装で、暗めの空間にクリスタルのシャンデリアが柔らかな光輪を投げかけていた。

「涼子奥様、お一人ですか?」

バーテンダーが私に気づき、少し驚いた様子を見せた。

「ええ、一人で静かに飲みたくて」

私はバーカウンターの一番隅の席に腰を下ろし、ウィスキーを一杯注文した。

アルコールが喉を通り、灼熱感...

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