第14章

 碧井天川がいつまで経っても反応しないのを見て、藍原華月は手に持った菓子を彼の口元へと差し出した。

「食べてみますか?」

 碧井天川が顔を向けた拍子に、その薄い唇が不意に彼女の指を掠めた。藍原華月は火傷でもしたかのように指を縮め、心臓が制御できないほど激しく跳ねる。

 だが彼女は手を引っ込めることはせず、ただ期待を込めた眼差しで碧井天川を見つめた。

 碧井天川の視線が彼女の微かに紅潮した頬に数秒留まり、やがて頭を下げて一口かじった。

 途端に、薔薇の清涼な甘みが口いっぱいに広がる。想像していたような甘ったるさはなく、むしろ淡い香りが鼻に抜け、普段は甘いものを好まない碧井天川でさえ、...

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