第16章

「俺のところに、理由は要らない」

 碧井天川は苛立ちを露わにして眉をひそめた。朝倉紗雨の言い訳にこれ以上付き合う忍耐など、彼には残っていなかった。

「天川、私……」

 彼女は一歩踏み出し、潤んだ瞳で碧井天川を見つめ、何かを訴えようとする。だが、天川は冷徹にその言葉を遮った。

「小林!」

 ドアの外で事の成り行きを窺っていた小林秘書が、待っていましたとばかりに即座に入室する。表情は厳粛そのものだ。

「社長、お呼びでしょうか」

「朝倉紗雨を帰らせろ」

 天川は紗雨の顔を鬱陶しげに一瞥し、続けた。

「今後、俺の許可なく部外者をオフィスに入れるな」

 小林は紗雨を一瞥した。社長の...

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