第26章

「なにをそんなに見ている? 俺の顔に何かついているか?」

 藍原華月がじっと見つめてくるのに対し、碧井天川は片眉を跳ね上げた。彼女の小さな頭の中で何が渦巻いているのか、見当もつかないといった風情だ。

 家を出たい――その一心で、藍原華月はスマートフォンを置くと、すぐさま張り付いたような作り笑いを浮かべて碧井天川の前に歩み寄った。

「あの、ちょっと相談があるんだけど……」

(はっ、なにか頼み事か)

 それにしても、白々しい笑顔だ。泣き顔のほうがまだマシに見えるほど不自然だった。

 碧井天川は腕を組み、ドア枠に斜めにもたれかかると、整った眉を微かに動かした。

「なんだ? 言ってみろ...

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