第36章

「天川、その言い草はあんまりじゃないか? 私の世間的なイメージは、碧井家の体面そのものなんだぞ」

 碧井黎人は不快感を露わにし、声を沈めた。

「体面だと? スキャンダルだらけの碧井家に、今さら守るべき体面などあるのか?」

 碧井天川の瞳には嘲りの色が浮かんでいた。碧井黎人の言葉など、彼にとっては笑い話でしかない。

 この兄はいつだってそうだ。永遠に謙虚な君子を気取っている。

「いい加減にしろ!」

 二人の息子が言い争うのを見て、碧井老人は不機嫌そうに言葉を遮った。

「華月も今日は酷い目に遭ったんだ、顔に傷まであるじゃないか。あとで医者に薬を用意させろ」

 碧井老人は複雑な眼差...

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