第38章

「碧井奥様」

 藍原の母は慌てて手土産を置き、ソファの縁に畏まって座った。

「本日は突然お伺いしてしまい、ご迷惑ではなかったでしょうか」

「まさか」

 碧井夫人は彼らが持参した手土産を一瞥し、眼底に微かな蔑みの色を走らせたが、口調だけは丁寧に取り繕った。

「わたくしもずっと、お二人と親しくお話ししたいと思っておりましたのよ。ただ多忙で叶いませんでしたけれど。本日はそちらからお越しいただけるなんて、嬉しいですわ」

 藍原の母は部屋を見回すが、華月の姿はない。堪えきれずに尋ねた。

「あの、碧井奥様。華月は……? 今回はあの子の顔を見に来たのです。結婚してから実家への電話も少なくなっ...

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