第43章

「以前は朝まで飲み明かして、泥酔するまで帰らなかったのに、今日は一杯で帰るなんてな」

「さすが既婚者だ。店を出た瞬間から奥さんのことが頭にあるってか」

「明日の朝、用事がある」

「チッチッチッ。明日の朝に用事があるんじゃなくて、早く家に帰って奥さんに会いたいだけだろ?」

 碧井天川は振り返りもせず、ドアを押して店を出て行った。

 一方、藍原華月はスーツケースのチャックを閉め、邪魔にならない部屋の隅へと寄せた。

 荷物は多くない。中身はスーツケース一つで足りた。

 時間を確認すると、深夜十二時を回っている。あと数時間もすれば、ここを離れることができる。

 興奮のせいか、華月には...

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