第53章

「呼び方を変える? どうして?」

 藍原華月は怪訝そうに眉を寄せた。今のままで何の問題もないはずなのに、なぜわざわざ変える必要があるのだろう。

「俺は君の夫だぞ。いつまでもフルネーム呼びじゃ、格好がつかないだろう」

「私たち、そんなに親しい仲じゃないし。普通でしょ?」

 藍原華月は気にした様子もなく答えた。彼の名前をそう呼ぶことに慣れてしまっているし、今さら変える気も起きない。

「親しい仲じゃない、だと?」

 結婚してこれだけ経ち、夫婦として最も濃密な行為さえ何度も重ねているというのに、親しくない?

 この女は、どこまで薄情なんだ!

 だが、藍原華月には碧井家を出るという目的...

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