第59章
額にかかるほつれ髪をそっと払い、自分でも気づかないほどの慈しみを滲ませた声で彼は囁いた。
「誰が、お前に冷たくしたり優しくしたりしたって? ただ、お前のことが大切すぎて……碧井奏とあんなに親しげにしているのが我慢できなかっただけだ」
碧井天川は腰を折り、彼女をいわゆるお姫様抱っこで抱き上げた。その動きは、彼女の眠りを妨げないよう、どこまでも慎重で優しい。
藍原華月は小さく身じろぎし、無意識に彼の懐へと潜り込む。その姿はまるで、庇護を求める小鹿のようだった。
天川の胸の奥が温かく満たされる。抱きかかえる腕に自然と力がこもった。
寝室に戻ると、壊れ物を扱うように彼女をベッドに...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
61. 第61章
縮小
拡大
