第63章

実家で朝食を済ませると、二人は藍原家を後にした。

 帰りの車中、藍原華月はバックミラー越しに、次第に小さくなっていく両親の姿を目で追い続けていた。その眼差しには、隠しきれない名残惜しさが滲んでいる。

 助手席の彼女の心情を察したのか、碧井天川はそっと彼女の手を握りしめた。

「仕事が落ち着いたら、また時間を作って父さんと母さんの顔を見に来よう」

 いつの間に、これほど自然に「父さん、母さん」と呼ぶようになったのだろうか。

 以前に比べると、彼は随分と付き合いやすくなったような気がする。

 碧井家の本邸に戻ると、リビングには柊木汐里と碧井奏の姿があった。

 藍原華月が帰ってきたのを...

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