第66章

藍原華月の剣幕に押され、受付嬢は渋々ながらも小林補佐に内線を繋いだ。社長の妻だと名乗る女性がいる旨を伝え、面会の可否を仰ぐ。

 電話を切ると、小林は直ちに報告を入れた。

「社長、奥様がいらしています。受付でお待ちですが、お通ししますか?」

 華月が来たと聞き、碧井天川の冷徹な表情が僅かに揺らいだ。一瞬、今すぐにでも階下へ駆けつけたいという衝動に駆られる。

 だが、今朝の光景が脳裏をよぎった。キャンパスで彼女が碧井奏と抱き合っていた姿だ。

 天川は逸る気持ちを無理やり押し殺した。

「碧井社長、奥様がいらしたのなら、私は席を外したほうがよろしいかしら?」

 社長室のソファから、ファ...

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