第68章

謝罪の言葉が、あの碧井天川の口から出ようとは。

「じゃあ、離婚の件は……」

 藍原華月が言いかけた言葉を遮るように、碧井天川は彼女の手を強く握りしめた。その口調は真剣そのものだ。

「離婚はしない。いいか? 誤解は解けたんだ、離婚の話はこれで白紙に戻そう」

 離婚はしない――その言葉を聞いた瞬間、華月の胸を占めていた重苦しい何かが、ふっと消え去った。

 彼との結婚生活が長くは続かないと分かっていたはずなのに、いつの間にか、碧井天川という存在は彼女の心に深く根を下ろしていたようだ。

「十日以上も家に帰らなかったのは……私に会いたくなかったからじゃないの?」

 十数日もの不在。その間...

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