第90章

 藍原華月がまだ迷っているのを見て、彼女は強引にグラスを手に押し付けた。

「一杯だけでいいから、飲んでみてよ」

 ここまで熱心に勧められては、藍原華月も無下には断れない。

 それに、この女子生徒とは普段からそこそこ仲が良いのだ。彼女の顔を立てる意味でも、これ以上拒むのは気が引けた。

「分かった、一杯だけね」

 藍原華月は一口飲んでみた。味は悪くない。

 今日の誕生日のために、雪村詩織は相当奮発したようだ。食事にカラオケ、さらにこれだけの酒を用意するとは、まさに大盤振る舞いである。

 遠巻きに見ていた雪村詩織は、藍原華月の一挙手一投足を観察していた。彼女がグラスを傾けた瞬間、その...

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