第93章

 雪村詩織は口に黒い布を強く噛まされ、両腕を屈強なボディガードに押さえつけられていた。恐怖で全身が止まらない震えを起こしている。

 一体自分が誰を怒らせたというのか、彼女には見当もつかなかった。

 やがて車は碧井家の裏邸へと滑り込む。

 乱暴に引きずり出された雪村詩織の視界に飛び込んできたのは、地面に転がる一人のホームレスの姿だった。

 男は意識を失っており、両手両足は拘束されている。

 そして何よりおぞましいのは、その股間が鮮血で赤黒く染まりきっていたことだ。

 あまりに血生臭い光景に、雪村詩織は膝から崩れ落ちそうになった。必死に逃げようと身をよじるが、嗚咽交じりの悲鳴は猿轡に...

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